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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)271号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1(一) 成立に争いのない甲第二ないし第六号証、甲第九号証及び第一〇号証によれば、本願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果は、次のとおりであることが認められる。

(1) 本願発明は、地殻の変位振動、物体の変位運動、加速度等を正確に測定・表示する電磁駆動による変位運動測定装置に関する(昭和四八年八月三日付け手続補正書(以下「補正明細書」という。)第一頁第一八行ないし第二頁第一行、昭和五五年九月一六日付け手続補正書第一頁第一八行ないし第二頁第一行)。

従来の地震計は、第1図(別紙図面(一)参照)に示すように、一部を地殻1の表面に固定してある台2と、一端を台2に他端を重錘3に取り付けた二個のスプリング4、5と、重錘3の一部に取り付けた記録ペン6と、記録ペン6の移動を記録する記録紙7とから形成され、地殻1の上下振動に合わせて台2が上下振動を行い、これに伴つて二個のスプリング4、5によつてバランスのとれている重錘3の平衡状態がくずれ、重錘3も固定台2に対して相対的に移動を行い、この移動量を記録ペン6により記録紙7に記録するが、重錘3の移動は実際上スプリング4、5の制動抵抗等の影響により正確な移動を行わず、かつ非直線性の移動を行うので指示目盛が不均一なものとなり、正確な変位量を検知することが不可能で電気的に補償することも困難である(補正明細書第二頁第六行ないし第三頁第七行)。また、第7図(別紙図面(一)参照)に示すように、力又は加速度、ないし加速度の積分である速度、ないし速度の積分である変位を測定する方法として、磁界中のコイルに電流を流し、コイルに働く外力とローレンツ力とをつり合わせたものも知られているが、磁極間にコイルを挿入することが必要であり、さらに電流によつてコイルに働く力の向きが磁束と電流の向きとに直角な一つの方向に特定されるので、不特定方向に働く力を測定することが非常に困難であり、地震のように不特定方向でかつ広い範囲にわたる変位運動を測定することに適していない(昭和五五年四月三日付け手続補正書第一頁第一八行ないし第三頁第一一行、昭和六〇年一一月二九日付け手続補正書第二頁末行ないし第三頁第二行)。

本願発明は、従来技術における右欠点を除去するため、重錘を固定台中に浮かし、かつ変位振動が生じても磁気駆動によつて固定台に対し見掛け上動かない状態にしておき、スケール外れを防ぐことができ、併せて振動量と表示とを比例関係にした電磁駆動による変位運動測定装置を提供することを目的とするものである(補正明細書第三頁第一一行ないし第一七行、昭和五五年九月一六日付手続補正書第二頁第二行ないし第四行)。

本願発明は、右技術的課題(目的)を達成するため、その要旨とする特許請求の範囲(昭和六一年七月一二日付け手続補正書第一頁第四行ないし末行)の構成を採用したものであつて、右特許請求の範囲に発明の詳細な説明を参酌すると、本願発明の電磁駆動による変位運動測定装置は、外力(地殻の変位振動、物体の変位運動、加速度等)が加えられて変位運動をする固定台の内部に浮遊体を浮遊させ、固定台と浮遊体との間隔を一定に保持するように構成したもので、固定台が変位運動をしても浮遊体は慣性によつて元の位置に留まろうとするので両者の間に相対運動量が生じ、この相対運動量を検出して、相対運動を打ち消す方向の力を固定台から浮遊体に帰還するようにして固定台と浮遊体の間隔を一定に保持するものであり、このときに検出された相対運動量に比例する関係にある帰還量を知ることによつて外力を知るものである。そして、本願発明は、浮遊体として慣性の大きな、すなわち、質量の大きな重錘を用いると共に、重錘を浮上させる力に磁石による電磁力を用い、相対運動を打ち消す方向の力を電磁石による電磁力により与える構成により大きな外力の変化を測定できるものである。

(3) 本願発明は、前記(2)の構成を採用したことにより、従来技術のスプリングを使用した場合に生ずる制動抵抗等の影響が全くなく、かつ重錘が見掛け上浮いた状態にあるので、正確に変位振動を記録でき、また記録も比例関係に表示できるという作用効果を奏するものである(補正明細書第一九頁第一六行ないし末行)。

(二) 一方、成立に争いのない甲第七号証によれば、第一引用例記載の発明は、球入り微小加速度計、特に高感度三次元式球入り微小加速度計に関し、高精度の太陽輻射圧が衛星に与えるような10-8g~10-9gくらいの加速度を測ることを目的としたものであつて、審決認定のとおり、「浮遊する球1と球1の保持器2(本願発明の「固定台」に相当する。)と、球1の中心を原点とする三直交軸に沿つて保持器2に取り付けられた三対の極電極に及び周極電極13と、導電性の球1が第一電極であり、極電極12及び周極電極13が第二電極である第一及び第二キヤパシタと、球1が加速度の影響で変位したとき、それに伴う第一キヤパシタの容量の増減を検知して、球1の偏位を表す信号を出力する位置検知器19~22(本願発明の「検知部」に相当する。)と、この検知信号を増幅した位置制御信号を周極電極13に帰還電圧として供給し、第二キヤパシタに関連する静電力を球1に加え、球1を平衡位置に復帰させる位置制御器23、24(本願発明の「制御部」に相当する。)と、位置制御器からの出力電圧の一部を供給して、加速度の分力を測定又は記録する測定又は記録装置99、100(本願発明の「表示ないし記録部」に相当する。)を有する」(右構成については、当事者間に争いがない。)微小加速度計であつて、外力が加えられて変位運動をする保持器2の内部に浮遊体である球1を浮遊させ、保持器2と球1との間隔を一定に保持するように構成し、保持器2が変位運動をしても球1は慣性によつて元の位置に留まろうとするので、両者の間に相対運動量が生じ、この相対運動量を検出して、相対運動を打ち消す方向の力を保持器2から球1に帰還するようにして保持器2と球1の間隔を一定に保持するものであり、このときに検出された相対運動量に比例する関係にある帰還量を知ることによつて保持器2に加えられた外力を知るものであることが認められる。

右認定事実によれば、第一引用例には、静電力(静電気による力)によつて浮上させられた球を休止位置に復させるために、検知した変位量に比例した帰還電圧を周極電極に供給することによつて、球に静電力を加える加速度計が記載されており、この加速度計の測定の対象となる変位運動量は、太陽輻射圧が衛星に与えるような微小な加速度であつて、このために浮遊体は慣性の小さな中空の球を用いると共に中空の球を浮上させる力に静電力を用い、相対運動を打ち消す方向の力を同様な静電力により与えたものであり、このことによつて微小な加速度を測定できるものと理解される。

(三) 前記(一)及び(二)認定事実に基づき本願発明と第一引用例の記載の発明とを対比すると、両者は、外力が加えられて変位運動をする固定台(保持器)の内部に浮遊体(重錘、球)を浮遊させ、固定台と浮遊体との間隔を一定に保持するように構成したもので、固定台が変位運動をしても浮遊体は慣性によつて元の位置に留まろうとするので両者の間に相対運動量が生じ、この相対運動量を検出して、相対運動を打ち消す方向の力を固定台から浮遊体に帰還するようにして固定台と浮遊体の間隔を一定に保持するものであり、このときに検出された相対運動量に比例する関係にある帰還量を知ることによつて固定台に加えられた外力を知るものである点(以下、この方式による加速度計を、浮遊体と固定台の間隔を検出した相対変位量を帰還することにより該間隔を自動的に一定に保持し平衡を保つ加速度計であるから、審決にならつて「自動平衡型の加速度計」という。)で共通し、審決が認定した(1)ないし(4)の点で相違するものというべきである。

2(一) 原告は、審決は、本願発明における重錘と第一引用例記載の発明における球とは同一であると認定しているが、重錘と球とは浮上させる物体という意義では同じであるものの、本願発明における重錘は字義どおり重さを増すために加えられるのでそれ自体重いものであるのに対し、第一引用例記載の発明における球は軽いものであり、そのために中空体で構成されているものであるから、審決の右認定は誤りである旨主張する。

ところで、本願発明と第一引用例記載の発明に共通の自動平衡型の加速度計は、前記1認定のとおり、外力を受ける固定台とこの固定台上に浮遊する浮遊体との間の相対運動を検出し、この相対運動量を打ち消す大きさと方向の力を浮遊体に与える(帰還する)ことにより平衡を取るという測定の原理を用いることを考慮すると、相対運動が検出でき、この運動量を打ち消す大きさと方向の力を浮遊体に与えることのできる範囲であれば、測定する加速度が大きいか小さいかにかかわらず利用できるものであるから、浮遊体の質量を測定する加速度の範囲に適したものに選択することによつて、測定できる加速度の範囲を大きなものから微小なものまで選ぶことができるものである。すなわち、微小な加速度を測定するときには、固定台に加えられた外力が必要以上に強力な浮上力によつて直接に浮遊体に影響を与えないようにしなければならないから、微小な浮上力を生じる浮上手法を用いることが必要となり、かつ、質量の小さな浮遊体を浮上させるためには小さな浮上力でよいのに対し、大きな加速度を測定するときには、質量の大きな重錘を浮上させるために強力な浮上力を生じる浮上手法を用いることが必要となり、かつ、慣性の大きな重錘を強力な浮上力によつて浮上させても重錘の慣性に打ち勝つことのない程度の大きさの浮上力とすれば、固定台に与えられた外力の影響が直接浮遊体に与えられることが少なくなることは、通常の物理的な知識を有する者であれば、当然想到し得る常識的な事項といえる。

したがつて、自動平衡型の加速度計において、浮遊体をどのような重さのものとするかは、測定の対象となる変位運動ないし加速度の予想される大きさ等に応じて当業者が適宜選択して決める単なる設計事項にすぎず、本願発明における重錘と第一引用例記載の発明における球とは右加速度計の構成要素としては実質的に同一であるから、この点に関する審決の認定に誤りはない。

(二) また、原告は、審決は、本願発明と第一引用例記載の発明とは重錘(球)の位置制御装置が磁気式か又は静電式かの相違はあるものの「自動平衡型の加速度計」である点で構成の大綱を同じくすると認定しているが、両者は測定する加速度の範囲が異なつており、この構成対象の違いにより装置の構成が全く異なつているものであるから、審決の右認定は誤りである旨主張する。

しかしながら、本願発明と第一引用例記載の発明に共通の自動平衡型の加速度計は、浮遊体の質量を測定する加速度の範囲を適したものに選択することによつて、測定できる加速度の範囲を大きなものから微小なものまで選ぶことができるものであることは、前記(一)認定のとおりであり、この点はまさに設計に当たつてどの範囲の加速度を測定するか測定の対象を決定することによつて自ずから定められる単なる設計事項にすぎないというべきである。そして、測定する加速度が大きなものであるときには慣性の大きな、すなわち質量の大きな重錘を用いて大きな帰還量に対応できるようにし、測定する加速度が小さなものであるときには慣性の小さな、すなわち質量の小さな中空の球を用いて微小な帰還量によつて浮遊体を平衡させ得るようにすればよいことは当業者にとつて自明の事項にすぎない。

この点に関し、原告は、第一引用例記載の発明における微小加速度計は無重力に近い状態の下で使用されるものであり、球と保持器は無重力状態の関係になつており、これを地上で使用した場合(宇宙空間では働かない強力な重力が作用する結果)球を浮上させることが無理であることは当業者が容易に理解し得るところである旨主張する。

第一引用例記載の発明における加速度計をそのままの構成で地上で使用した場合、当然原告主張の結果をもたらすものといえる。しかしながら、第一引用例記載の発明における加速度計も固定台に相当する保持器に外部からの加速度が加えられるものであり、かつ固定台と浮遊体との相対的な位置関係の変化を検出することによつて固定台に加えられた加速度を検出するものであることは、加速度計の原理からして当然に理解できることであり、この点で本願発明の加速度計と変わるところがない。そして、重力場で物体を浮遊させるときに重力を打ち消す方向と大きさの力を与えることは自明のことであるから、本願発明の加速度計の重錘に加えられる浮上用磁気力が重力を打ち消すものであればよいことも自明の事項であり、第一引用例記載の発明における加速度計を重力場で使用するときに重力を打ち消す方向と大きさの力を加えるようにすることは、どのような重力が加わる空間で用いるかを考慮することによつて必然的に決められる基礎的な条件にすぎないから、原告の右主張するところを理由に本願発明と第一引用例記載の発明とが加速度計として異なるものであるということはできない。

したがつて、本願発明と第一引用例記載の発明とは、前記1(三)認定の自動平衡型の加速度計である点では共通しており、ただ測定対象である加速度の違いから、その構成要素である浮遊体を前者が重錘としているのに対し後者が中空の球としているにすぎないから、両者は磁気式か静電式かの相違はあるものの「自動平衡型の加速度計」である点で構成の大綱を同じくするとした審決の認定に誤りはない。

3 原告は、本願発明と第一引用例記載の発明との相違点(1)ないし(4)についての審決の認定、判断は誤りである旨主張する。

ところで、二つの物体の間に与えられる力として、質量に基づく万有引力のほかに、磁気量に基づく磁気力(斥力・引力)、電気量に基づく静電力(斥力・引力)があることは初歩的な物理学の常識であり、これらの力を利用するに当たつては、必要とする力の大きさ、力が与えられる態様などの様々な条件を考慮して、適宜選択・利用されることは自明の事項である。

そして、成立に争いのない甲第八号証によれば、第二引用例記載の発明は、電磁型振動計に関するものであつて、審決認定のとおりの「対向して複数個の対を成す永久磁石2~13、前記対を成す磁石のそれぞれ一方8~13を含む振動計外箱、前記対を成す磁石のそれぞれの他方2~7を含み前記対を成す磁石の斥力により空間に浮遊する球状振動子1、球状振動子1の振動計外箱に対する相対変位に基づく磁気的不平衡を電磁的方法により検知する検知部14~19、検知部14~19の出力を指示する計器20~22を有する電磁型振動計」が記載されていることが認められる。

右認定事実によれば、第二引用例には、振動の振幅、振動の加速度を計測する振動計(本願発明及び第一引用例記載の発明における「加速度計」に相当する。)において、振動計外箱内に位置した振動を検出するための振動子(前記1(三)認定の「浮遊体」に相当する。)を磁石の斥力を用いて浮遊させることが記載されていると理解でき、自動平衡型の加速度計における静電力による浮遊体の浮上に代えて磁気力による浮上を適用することに格別な障害があるとはいえないから、第一引用例記載の発明における自動平衡型の加速度計において静電力による浮遊体の浮上に代えて第二引用例に記載された磁気力による浮上を用いることは当業者にとつて容易に想到し得たことというべきである。

また、第一引用例には、前記1(二)認定のとおり、静電力によつて浮上させられた球を休止位置に復させるために、検知した変位量に比例した帰還電圧を周極電極に供給することによつて、球に静電力を加える自動平衡型の加速度計が記載されており、このことは球を浮上させるために加えられた力と同じ性質の力を用いて固定台と浮遊体の間隙を一定に保持することが示されているものと理解できる。そして浮遊体の浮上のための力と位置制御のための力とを、同じ種類の力にすることは、異なる種類の力を用いる場合に比べて様々な困難が少ないことが期待でき、その構成も簡略化されることが期待できるので、通常優先的に採用を考える妥当な方法であると考えられるから、浮遊体の浮上に磁気力を用いたときには、位置制御のための帰還を、浮上に用いたと同じ磁気力によつて行うことを考えることはごく自然に想到し得たことといえる。また、物体に作用させる磁気力を制御するために、電磁石を用いることは、前掲甲第二ないし第六号証及び第九号証により認められる本願明細書の記載に徴しても、本願発明が新規に採用したものではなく、本件出願前慣用手段であると認められ、電磁石が発生する電磁力の大きさを決定する重要でかつ容易に変化することのできる因子として電流があることは物理学的に自明のことであるから、電磁石が発生する電磁力の大きさを制御するための帰還を電流によつて行い、この電流量に基づいて変位運動量を表示ないし記録することも、当業者にとつて格別困難なことではない。

したがつて、第一引用例記載の発明における自動平衡型の加速度計の静電力による浮遊体の浮上に代えて第二引用例記載の発明における磁気力による浮上を用いるに際し、電磁石を用いて本願発明のような構成にすることも当業者にとつて容易に想到し得たことというべきである。

そうであれば、本願発明と第一引用例記載の発明との位置制御装置が磁気式か静電式かの相違に基づく審決認定の相違点(1)ないし(4)に係る構成、すなわち、本願発明において、(1)少なくとも一つの電磁石を含み、対向して複数個の対を成す磁石のそれぞれの一方が固定台に取り付けられ、それぞれの他方が重錘に取り付けられている構成にすることは、当業者が容易になし得たことであり、(2)重錘は磁力により浮上する構成、(3)検知部より出力する帰還電流を電磁石に供給する構成、(4)制御部から電磁石に供給する電流量に基づき変位運動量を表示ないし記録する構成にすることは、前記認定の磁気式を採用したことによる単なる設計変更にすぎないというべきである。

この点に関し、原告は、第一引用例は磁気式を用いる発明をも教示しているとの審決の認定は誤りである旨主張する。

しかしながら、前掲甲第七号証によれば、第一引用例には、「球入り加速度計であつて、検知装置が静電力、または光学式、または磁気式で、位置制御装置が磁気式または水圧式のものは既に提案されている。上述した感度の場合、地球の磁場に反応する磁性材料製の球は用いることができない。」(第二欄第二五行ないし第三二行)と記載され、ここに「上述した感度」とは、「10-8gから10-9gくらいの加速度」(同欄第一九行、第二〇行)における感度を意味すると認められるから、右記載事項は、既に浮遊体の位置制御装置として磁気式のものが提案されているが、10-8g~10-9gくらいの微小な加速度を測定するには、測定すべき力に誤差を与える磁気力が球体に及び測定に悪影響を与えるので磁気式を採用することが適切でないことを述べたものであることが明らかであるから、当業者は右記載に基づき測定対象とする加速度によつて浮遊体の位置制御に磁気式のものを採用することができ、特に地磁気の影響を無視できる程度の大きな力を測定する自動平衡型の加速度計にあつては磁気式を採用することもできると理解するものというべきであるから、第一引用例には、磁気式を用いる発明をも教示しているとした審決の認定が誤りであるとすることはできない。

また、原告は、第二引用例には自動平衡型についての記載も示唆もないから、これを自動平衡型とすることは、当業者が容易に思い到るところではなく、かつ第一引用例記載の発明を地震計のような強い振動を受けるものに適用する場合には、大きい電圧を与える必要があるが、球と保持台の間隙が〇・一mmと小さいから放電を生じ、この用途に用いることはできない旨主張する。

しかしながら、第一引用例記載の発明が自動平衡型の加速度計であることは前述のとおりであり、この加速度計について、測定する加速度が大きなものである場合にもこれを測定することができる構成とするため球に代えて慣性の大きな、すなわち質量の大きな重錘を用いて大きな帰還量を対象とすることができるようにすると共に、この重錘を浮遊体として用いた場合に第二引用例の記載事項に基づきその浮上に静電式に代えて磁気式を用い、かつ少なくとも磁石の一つに電磁石を含ませることは、前記認定のとおり、当業者が容易に想到し得たところであり、そのように構成するならば、当然地震計のような振動測定にも適用することができるのであつて、原告主張の点は何ら右認定の妨げとなるものではない。

さらに、原告は、本願発明の位置制御方式は重錘の浮上方式と切り離して考えられるものではなく、また、第一引用例記載の発明は物体の浮上に静電式に代えて磁気式を適用することができないので相違点(2)ないし(4)について、「重錘の位置制御として静電式に代えて磁気式を採用することに伴う単なる設計変更に相当する」とした審決の判断は誤りである旨主張する。

しかしながら、第一引用例記載の発明について、浮遊体の位置制御の方式を静電式に代えて磁気式を採用することができる以上、その重錘は磁力により浮上する構成、検知部より出力する帰還電流を電磁石に供給する構成、制御部から電磁石に供給される電流量に基づき変位運動量を表示ないし記録する構成にすることは、単なる設計変更にすぎないことは、前述したところから明らかであつて、原告の右主張は採用することができない。

したがつて、相違点(1)について当業者の容易になし得る構成の変更に相当し、相違点(2)ないし(4)について重錘の位置制御として静電式に代えて磁気式を採用することに伴う単なる設計変更に相当とするとした審決の認定、判断に誤りはない。

4 本願発明は(<1>重錘の浮上及び位置制御に磁気式を用いており、磁気式は静電式に比して非常に強力なものであることは技術上自明であり、また、本願発明はその要旨とする構成を採用したことにより、<2>従来技術のスプリングを使用した場合に生ずる制動抵抗等の影響が全くなく、かつ重錘が見掛け上浮いた状態にあるので、正確に変位振動を記録でき、また記録も比例関係に表示できるという作用効果を奏することは、前記1(一)(3)認定のとおりである。

しかしながら、右<1>の作用効果は、静電式に代えて磁気式を採用したことによる効果であつて、第一引用例記載の発明における静電式に代えて第二引用例に記載された磁気式を採用したことにより当業者が通常予測し得る範囲のものにすぎず、右<2>の作用効果は、自動平衡型の構成を採用したことに伴う作用効果であつて、第一引用例記載の発明も当然奏し得る作用効果であるから、これをもつて本願発明に特有の作用効果とすることはできない。

したがつて、審決が本願発明の奏する顕著な作用効果を看過誤認したものとはいえない。

5 以上のとおりであるから、本願発明は第一引用例及び第二引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとした審決の判断は正当であつて、審決に原告の主張する違法はない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当として棄却することとする。

〔編注〕本願発明の要旨は左のとおりである。

少なくとも一つの電磁石を含み、対向して複数個の対を成す磁石、前記対を成す磁石のそれぞれの一方を含む固定台、前記対を成す磁石のそれぞれの他方を含み前記対を成す磁石の斥力ないし引力により浮上する重錘、前記固定台の外力による変位運動を前記固定台と前記重錘との相対的位置ずれにより検知する検知部、前記外力による前記固定台と前記重錘との相対運動による相対的位置変化量を前記検知部より出力する信号により帰還電流として前記電磁石に供給し、磁力の変化により前記引力ないし斥力を変化させ前記固定台及び前記重錘の間隔を一定にする制御部、前記制御部から前記電磁石に供給される電流量に基づき変位運動量を表示ないし記録する表示ないし記録部を有することを特徴とする電磁駆動による変位運動測定装置

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